蓮舫氏のサプライズ人事は吉と出るか 求められるのは受けの能力 … – livedoor



 通常国会は29日から衆院予算委員会で平成29年度補正予算案の実質審議が始まり、与野党の本格的な論戦がスタートした。

 野党第一党の立憲民主党は今国会から参院会派を立ち上げ、参院国対委員長に蓮舫元民進党代表(50)を起用した。党首経験者の国対委員長は異例だが、衆院の辻元清美国対委員長(57)と合わせ衆参両院でともに女性が国対委員長となるのも主要政党では初めてだ。すでにインパクト十分だが、何かと目立つ2人が担う仕事は、あくまで水面下の交渉がメーンとなる国対委員長。果たして異例ずくめのサプライズ人事は吉と出るか凶と出るか−。

 「野党としてしっかりとわれわれの主張を国会の中で示し、行政を監視していくということを考えたときにその発信力、突破力。やはり蓮舫さんではないかと思った」

 通常国会召集を目前に控えた今月19日、立憲民主党の枝野幸男代表(53)は参院国対委員長に蓮舫氏を起用した狙いを記者団にこう語った。蓮舫氏は昨年末に民進党に離党届を提出し、立憲民主党に入党した。

 民進党の再生が道半ばでの元代表の離党に「投げ出しだ」との批判もあったが、蓮舫氏は入党届を提出後、記者団に「民進党のトップとしても頑張った。党を再生したいという思いは(民進党の)大塚耕平代表と同じ。違う党にいることによってつなぐことができるのではないか」と述べ、両党の連携の橋渡し役になる考えを示した。

 なんとも都合の良い解釈に聞こえるが、それも蓮舫氏らしさか。昨年の衆院選で分裂劇があったとはいえ、現在も参院の野党第一党会派は42人の民進党だ。立憲民主党は衆院では第一党だが、参院では6人しかいない。衆参で野党第一党が異なるねじれの中で、蓮舫氏には民進党との橋渡しに加え、衆参をつなぐ役割も求められる局面もあるかもしれない。

 辻元氏と蓮舫氏は昨年の衆院選で、当時民進党に所属していた蓮舫氏が「女の友情」として、民進党を離党し立憲民主党入りした辻元氏の応援に駆けつけた仲だ。辻元氏は国会召集日の22日、党の会合で「蓮舫国対委員長と女性2人ということで、今までなかったシフトではないかと思う」と述べ、コンビでの今後の国会運営に自信をのぞかせた。

 しかし、コトはそう簡単にはいきそうもない。国対委員長は、法案の審議をはじめとする国会運営全般について指揮をとり、他党との協議も担う。水面下の交渉など国会運営を裏方で支える仕事と言っていい。求められる資質は、枝野氏が期待する発信力や突破力よりも、むしろ調整力になる。つまり“攻め”よりも“受け”の能力だ。

 その点、蓮舫氏のこれまでの歩みを振り返ると疑問符をつけざるを得ない。調整力は最も蓮舫氏の苦手とするところだからだ。

 具体的な例を挙げよう。蓮舫氏はまだ民進党代表だった昨年2月、原発政策をめぐり迷走した。同年3月12日の党大会に向け、次期衆院選の公約として「2030年原発ゼロ」の方針を打ち出そうとした。それまで民進党が掲げてきた「2030年代原発ゼロ」を前倒ししようとしたのだ。

 しかし、これに猛反発したのが電力総連などを傘下に持つ民進党最大の支持母体である連合だった。「2030年代でもハードルが高い」と考えていた連合に根回しなしでいきなり原発ゼロの期限前倒し方針をぶち上げようとしたことに党内の連合関係議員からも集中砲火が浴びせられた。

 それでも最後まで押し通す腕力があったならともかく、蓮舫氏は結局、自らの調整不足が要因となり方針の撤回に追い込まれた。党内の脱原発派も失望させることとなり、双方から党首としての求心力を大きく失うきっかけとなった。

 蓮舫氏は粘り強い交渉にも必要であろう緻密さにも欠ける。これもまた民進党代表時代のことだ。28年12月7日に行われた安倍晋三首相(63)との党首討論で「首相のごまかす力、まさに神っています」「息をするようにウソをつく」などとメディア受けを狙った言葉を言い放った。一方で質問の中身はというと、蓮舫氏は「有効求人倍率は改善されたかもしれないが、東京に一極集中しているからだ。地方に仕事がない」と決めつけた。だが、安倍政権で有効求人倍率は初めて全都道府県で1以上を達成した。「地方に仕事がない」とは言えない。首相が「強行採決をしたことがない」と発言したとも決めつけたが、首相は同年10月の国会答弁で「強行採決をしようと考えたことはない」と述べただけだ。

 いわゆる「二重国籍問題」でも戸籍謄本の開示など対応が後手に回った様は、受けの弱さを露呈させた。

 辻元氏も蓮舫氏と同じく攻めの印象が強い。13年5月、当時社民党の議員だった辻元氏は小泉純一郎首相(76)を相手にテレビ中継の入った予算委員会で「総理、総理、総理…」と12回連呼した印象が強い。辻元氏はこの後、『総理、総理、総理!!−“小泉現象”におそれず、ひるまず、とらわれず』との表題の本を出版したほどである。安倍首相に対しても「総理、総理…」と呼びかける場面が目立った。

 しかし調整力不足はすでにデビュー戦となった昨年の衆院選後の特別国会であらわになっている。会期幅をめぐって野党間で衆参の意思疎通が滞り、衆院で一度は与党と合意した辻元氏が参院で野党第一党の民進党の了解を取り付けられず、参院自民が衆参の野党間に入って調整する事態となった。

 予算委員会の与野党の質問時間配分をめぐっても、他の野党の意見をまとめて、従来の「与党2対野党8」からの時間配分の増加を求めた与党国対と対峙しなければならない立場だった。しかし、野党内ですら話を詰め切れず、結局「与党5対野党9」で与党側に押し切られた。

 ただ、「人たらし」では辻元氏が一枚上手だろうか。8年に社民党の土井たか子党首(当時)の秘蔵っ子として初当選した辻元氏は当時の「自社さ連立政権」で、自民党幹部だった加藤紘一氏、山崎拓氏、野中広務氏らに目をかけられ、現在も自民党内に幅広い人脈を持つ。

 辻元氏が昨年12月に都内で開いた政治資金パーティーには、野党幹部に加え森喜朗元首相(80)や自民党の河野太郎外相(55)、中谷元・元防衛相(60)らも駆けつけ、来賓の顔ぶれの多彩さが目を引いた。森山裕国対委員長(72)は旧山崎派の「近未来政治研究会」(現石原派)に所属しており、山崎氏と近い辻元氏に親近感も抱いているようだ。

 ただ、この自民党人脈が野党側にとって有利に生かされるのか、それとも与党側にとってくみしやすい相手ととらえられるのか。そこは辻元氏の手腕が問われる。

 国対委員長という立場では、委員会で質問に立つ機会はほぼないと言っていい。辻元氏と蓮舫氏はこれまで国会審議で首相や閣僚を舌鋒鋭く追及することで注目を集めてきた。国対委員長に就いたことで持ち味?である発信力、突破力が十分に発揮できなくなる可能性もある。与党側は「国会審議で面倒くさい相手が減った」とほくそ笑んでいるだろう。 (政治部 小沢慶太)

 国対 国会対策委員会の略称。法律に基づく公式の機関ではないが、各党が衆参にそれぞれ国対組織を設け、本会議の日程や法案の扱いなどの国会運営について協議する。「参院」と断り書きがない国対委員長は衆院を指す。

 一般的に与野党の国対で合意した国会日程や重要法案などは常任委員会である議院運営委員会(議運)に諮られ、公式に政治日程に上る。「55年体制」下では自民、社会両党の国対委員長同士が話し合いで国会の運営を事実上決めることが多く、「国対政治」と揶揄された。

 国対委員長には他党との信頼構築や頻繁な調整、駆け引きの能力が求められることから、各党ともベテランを起用するケースが多く、国対に精通した議員は「国対族」と呼ばれる。大島理森衆院議長(71)はその代表格で、自民党国対委員長の通算在職1430日は同党の最長記録を誇る。

 自民党では金丸信、江藤隆美、梶山静六、古賀誠、中川秀直、二階俊博各氏ら実力者が経験している。結党から62年の間に現在の森山裕国対委員長まで49人が務めたが、後に首相に就いたのは宇野宗佑、海部俊樹両氏の2人しかいない。共産党の穀田恵二衆院議員(71)は20年以上連続して同党の国対委員長を務めている。



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