E-1サッカー、優勝の北朝鮮に賞金支払わず…サッカー連盟、安倍政権の意向を考慮 – ニフティニュース



 平昌オリンピック開幕まで、あと数日。このままいけば、冬季五輪史上もっとも盛り上がりに欠ける五輪として記録されることになりそうだ。国際オリンピック委員会(IOC)もさすがに焦ったのだろう。またぞろ平和とスポーツの祭典にお得意の“政治”をねじ込んできた。北朝鮮の五輪参加と、女子アイスホッケーでの初の南北合同チームの結成だ。

 平昌五輪の女子アイスホッケーは、開催国枠で出場する世界ランク22位の韓国を含め、8チームが出場。1次リーグは世界ランク上位のアメリカなど上位4チームのA組、下位4チームによるB組の2つに分かれる。五輪初勝利を目指す日本はスイス、スウェーデンとともにB組に入り、2月14日の予選最終戦で韓国と対戦することが決まっている。

 韓国チームの出場枠は23人だったが、北朝鮮との合同チームを結成するため、チームエントリーは北朝鮮選手12人を加えた35人に膨れ上がる。しかし、試合ごとの出場エントリーは22人(ゴールキーパー2人、選手20人)のまま。北朝鮮選手の出場枠は1試合最低3人なので、なかには試合に出場できない選手も出てくる。

 友好ムードを演出することで少しでも大会を盛り上げようというのがIOCの狙いだが、オリンピック憲章には「スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」と記されており、この精神に反すると言わざるを得ない。

●北朝鮮への賞金不払いが波紋

 昨年12月、日本で行われたE-1サッカー選手権(東アジアサッカー連盟主催)でも、出場した北朝鮮選手団に対して賞金を支払わないという“政治的”な忖度が働き議論を呼んだ。

 E-1サッカー選手権決勝大会は昨年12月8〜16日まで行われ、決勝には日本、中国、韓国、北朝鮮の男女計8チームが参加した。

 優勝賞金は男子が25万ドル、女子は7万ドルで、それぞれ4位まで賞金が出る。しかし、12月7日に行われた東アジアサッカー連盟設立15周年シンポジウムで、同連盟の田嶋幸三会長は「東アジア連盟として、今の国際情勢、国連決議などを踏まえて北朝鮮に賞金を支払わないことを決めています。(北朝鮮協会に)そう伝えています」と語った。

 しかし、「東アジア内の積極的な交流を図り、結束を深めることにより、地域内のサッカーを発展させるとともに、サッカーを通じた平和への貢献」をうたう東アジアサッカー連盟の設立目的には反しかねない。「賞金なしでも来たんだから問題ない」「呼んだ以上、賞金を払わないのはおかしい」「払わないなら呼ぶべきではない」など、インターネット上でも多くの議論を呼んだ。

 結果は男子が北朝鮮4位。女子は北朝鮮が優勝。女子は最優秀選手(MVP)、得点王、ベストディフェンダー、ベストゴールキーパーを北朝鮮が独占し、表彰式では優勝メダルを胸にした北朝鮮選手たちが手を突き上げ、満面の笑みで喜びを表した。

●東アジアサッカー連盟の回答は?

 東アジアサッカー連盟(EAFF)に話を聞くと、以下のような回答が文書で寄せられた。

「EAFF E-1サッカー選手権は、男女ともにEAFF加盟協会のうち、FIFAランキング上位3チームがシードされ、4チーム目は予選を勝ち抜いたチームに出場権が与えられます。今大会で北朝鮮代表は、女子がFIFAランキングによるシード、男子代表は予選を勝ち抜いて出場しました。現在、日本は北朝鮮と国交がなく、また、日本政府は北朝鮮への独自制裁措置として北朝鮮籍者の入国を原則禁止していることから、北朝鮮チームの日本入国については政府の方針にしたがうこととし、入国が許可されない場合は、2次予選2位の国が繰り上がり参加することで準備を進めてきました。

 その後、日本政府が北朝鮮の選手団の入国を特例として認めたことを受け、EAFFは、日本、中国、韓国、北朝鮮の男女計8チーム参加によるEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会を開催することを決めました。しかしながら、日本政府が北朝鮮向けの支払いを原則禁止していることや、昨今の国際情勢、国連決議等に鑑みて、北朝鮮男女代表チームの成績の如何を問わず、同国サッカー協会に対して賞金および賞品等を授与しないことを決定した次第です。

 以上が、北朝鮮サッカー協会に対し、賞金および賞品等を授与しないことを決定した経緯となります。なお、国際サッカー連盟(FIFA)もアジアサッカー連盟(AFC)も同様の措置を講じていることを併せて申し添えます。大会期間中は何ごともなく、各チームが持てる力を存分に発揮し、フェアでリスペクトあふれる大会になったと考えております」

 北朝鮮は参加を辞退することもできた。だが、北朝鮮はそれでもやって来た。その意味は深く、大きい。田嶋会長も「北朝鮮に賞金を払わない」という苦渋の言葉に続け、東アジア情勢が緊迫するなかで予定通りに大会が開催される意義を強調し、こう語った。

「世界各国が驚いている。アジアはパレスチナの問題、サウジアラビア、カタール、イランの問題などで大会が開かれなかったり、中立地で試合をしたりするなか、こういう大きな問題を抱える北朝鮮が男女ともに日本に来て試合をすることには本当に意義がある。日本が東京五輪を前にして、政治とスポーツが離れていることを世界に示す良い機会だと思う。改めて入国を許可してくれた政府に感謝したい」

●もはや“ピョンヤン”五輪

 東京五輪が政治から離れているとはとても思えないが、韓国で政治とスポーツが最接近していることは間違いない。韓国国内でも「五輪の政治利用」と批判の声が上がっている。組織的なドーピング問題でロシアの選手団派遣は禁止され、選手169人が個人枠での参加となるなど、それでなくともケチが付いた平昌五輪。

 土壇場での北朝鮮の出場容認、初の南北合同チームの結成、統一旗を掲げての南北合同入場行進などが矢継ぎ早に決まり、“ピョンチャン”五輪ならぬ“ピョンヤン”五輪などと揶揄する声も聞かれる。

 南北合同入場行進は2006年のトリノ五輪以来となるが、同じ年の夏、北朝鮮がテポドン2号などを相次いで発射、10月には初の核実験まで行ったことを忘れてはならない。国会の予算委員会よりはましとでも思ったのか、安倍晋三首相も平昌五輪の開会式への参加を急遽表明するなど、平昌五輪はきわめて政治的な大会になりそうだ。

 北朝鮮選手団はフィギュアスケートペア、スピードスケート・ショートトラック(男子2)、アルペンスキー(男子2、女子1)、ノルディックスキー距離(男子2、女子1)、アイスホッケー女子12人の合計22人。アイスホッケー以外の競技では、北朝鮮代表として出場する。女子サッカーのような清々しい笑顔は、果たして見られるのだろうか。
(文=兜森衛)



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