<川崎市長選 150万人都市の行方>(上) 保育所不足 定員増も追いつかず – 東京新聞



コイン駐車場の上部を活用した認可保育所。駅前で便利だが、東急東横線の高架(写真左上)がすぐ脇を通る=中原区新丸子東で

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 「同じマンションの人たちの子どもは、誰も認可保育所に入れていない。どうやったら入れるか分からない」。働きながら一歳八カ月の長男を育てる川崎市幸区の女性(33)は、保育所不足を嘆く。

 長男は、園庭がなく手狭な市の認定保育園に通っている。体が大きくなって運動量が増える来年以降は、園庭などが広い認可保育所に通わせたいと考えている。入所に有利になるようにとの思いから、有給休暇を使って保育所を見学して回る。勤続十年の連休も費やすつもりだ。

 今の家に転居したのは三年前。長男が生まれる前だった。「ずっと入所希望を出しているのに、かなわない。認可に入りづらいとは知っていたが…。分かっていたらここには住まなかった」

 「待機児童ゼロ」を公約に掲げた福田紀彦さんは二〇一三年十月、市長に当選。市内の待機児童は、この年の四月の時点で県内最多の四百三十八人だったが、一五年四月の時点でゼロとなった。

 一七年度までに、各区役所の相談員など職員三十一人が新たに配置された。保育にかける予算は三十三億円から五十六億円に、認可保育所の定員は二万二千人から約八千人増えた。

 だがゼロ達成の陰には、冒頭の女性の長男のように、希望する認可保育所に入れず、認定保育園に通わざるをえない子どもたちがいる。こうした保留児童は待機児童に数えられない。一七年四月の時点で二千八百九十一人おり、毎年、増え続けている。

 保育所不足が顕著なのは、高層マンションが建設され、人口が増えている中原区の武蔵小杉駅や幸区の新川崎駅周辺。中原区内の認可保育所は八十二カ所あり、定員は約五千五百人。四年前に比べて、三十カ所約千五百人増えた。市は高まるニーズに合わせて手厚い整備をしてきたが、入所希望者の増加に追い付かない。市の担当者は「予想したよりも多くの子育て世代が転居してきた」。

 人が集まるエリアは地価が上昇し、子どもを通わせるのに便利な駅前は保育所を整備するにしてもコストがかさむ。今夏、武蔵小杉駅前にはコイン駐車場の上部を活用する全国的にも珍しい認可保育所ができた。立地の良さや、駐車場の上部空間がこれまで使われてこなかったことに着眼した。

 市の担当者は「希望通りに入所できない人がいることは知っているが、この四年間、待機児童対策で縮小させた制度は何もない。予算には限りがあり、できることはすべてやっている」と話す。

 武蔵小杉駅から徒歩五分のマンションに住む夏目真理さん(33)は今、長女の「保活」に励む。「こんな便利なところに住んでいるのに…。駅と反対側の施設も検討しないといけないのかも」

 冒頭の女性は訴える。「きちんとした場所で保育を受けられる環境を整えてほしい。市独自の施策を展開すれば、川崎は考えてるんだな、と思われるのに」 (大平樹)

 川崎市長選の投開票(十月二十二日)まで約一カ月。これまでに現職と新人の三人が出馬を表明した。各候補者の訴える施策が注目されるが、市民は今、どのような問題を抱えているのか。選挙戦を前に、市の課題を探ってみた。

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